粉骨の代行サービスという仕事をしていると、よくお客さまから「違法ではないのですか?」という質問を受けます。
この質問については、毎回回答することが難しく感じるのですが、結論から言うと「違法ではありません」。
ただ、国内には条例で散骨そのものを禁止している自治体もあるため、誰もが自由に散骨ができるというわけではありません。
今回はこういった点についてご説明します。
散骨は違法ではないが、合法でもない
亡くなった人の火葬や埋葬については、墓地、埋葬等に関する法律で細かく規定されていますが、その中では、散骨が認められているわけでもなければ、禁止されているわけでもありません。つまり、グレーな状態ということです。
ただし法務省では、「葬送のための祭祀として、
この節度のある散骨という所もまたグレーな印象を受けるのですが、少なくとも故人様のご遺骨を海に散骨するだけであれば、節度ある散骨の範囲に入るので安心いただければと思います。
陸上での散骨はハードルが高い
当然ですが、他人の土地に散骨をするということは、節度をもって行われているとは言い難く、罰せられる可能性があります。
道路や山林、田畑など、周辺の土地というのは誰かの土地であるため、たとえ故人が山菜採りによく行った思いでの山であっても、自分の所有する場所でなければ、所有者に許可を得ないと散骨はできません。実際2015年に、亡くなった妻の遺骨をスーパーのトイレに流し、書類送検された事件も発生しています。
そのため、気兼ねなく散骨が出来るのは、自宅の庭、事業者が「樹木葬場」として運営している土地、海上のいずれかが現実的です。
海岸での散骨は問題になるケースも
海上は基本的に誰かの所有物ではないのですが、かといって海水浴場や養殖場が近い場所で散骨するのは問題があります。散骨によって養殖魚の生態系に問題が生じたりした場合、損害賠償請求をされる可能性もないとは言い切れません。
また、海水浴場などで散骨をするというのも、先に述べたような「節度のある散骨」とは言えず、海水浴客や管理者に発見された場合に、トラブルになる可能性もあります。
近隣に養殖場や漁場が無く、人気のない岩場や防波堤などで、目立たないように散骨すれば、大きな問題にもなりにくいと思います。
散骨が条例禁止されている自治体も
法律上規定されておらずグレーとなっている散骨も、自治体単位では条例で禁止されている所があります。
→条例により散骨が禁止・または事前の許可が必要な地方自治体
遺骨を埋葬(埋めた)した時点で違法になります
このように、散骨については合法とも違法とも言えない、グレーなはんいですが、これが埋めるとなると話は変わってきます。
人骨を埋める(粉末化してあっても)ということは、「埋葬する」ということになるため、墓地、埋葬等に関する法律で「埋葬は墓地で行わなければいけない」と規定されています。
そのため、たとえ自宅の庭であろうとも、庭に粉骨した遺骨を撒くだけであればOKですが、撒いた後に飛んでいかないように土を被せるとアウトです。
自宅の庭に散骨をしようと考えている方は、注意するようにしましょう。
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自宅の庭や私有地に散骨する時に注意すべきこと
粉骨した遺骨を長期間手元供養としてご自宅で保管することもできますが、誰が見ても遺骨とはわからない状態になっているのであれば、散骨という供養の仕方もあります。 映画などから知名度が上がった海洋散骨も方法 ...
必ず粉骨してから散骨するように
散骨をする場所以上に注意しなければいけないのが、遺骨の状態です。散骨を行なうためには、必ず粉骨を行ない、外見上それが人骨であるとわからない状態にしなければなりません。
もしあなたが、空き地で人の骨を見つけたら、おそらく警察へ連絡すると思います。
つまり、人骨が落ちている・埋められているというのは「事件」なのです。たとえそれが、親族の骨を埋めたり、撒いたりしたものであっても、その事情を知らない人からすれば、得体の知れない人骨が遺棄されているという、ショッキングな事件です。
捜査の結果、事件性がない人骨と判断されても、それを撒いた(または埋めた)人が遺棄罪に問われる可能性があります。
そのため、どこに散骨をする場合であっても、必ず人骨とは判別できないように(目安は直径2mm以下)、粉末化する必要があります。
■粉骨していない遺骨を墓地以外に埋める
→違法(墓地、埋葬等に関する法律に違反する可能性)
■粉骨していない遺骨を撒く
→違法(遺棄罪に問われる可能性)
■粉骨した遺骨を墓地以外に埋める
→違法(墓地、埋葬等に関する法律に違反する可能性)
■粉骨した遺骨を撒く
→違法ではない